新社屋事務局
新たな環境を新たな発想、新しい働き方、新しいコミュニケーションが生まれる場所に
建設自体は約11ヶ月間でしたが、企画・設計まで含めると3年間に亘るプロジェクトになりました。そもそも新社屋建設を決めた理由は何だったのでしょう。
【津行】
当時大分本社では慢性的なスペース不足や老朽化への対応、働き方改革・生産性向上を促進する創造的作業空間の実現などが喫緊の課題でした。2019年度の新オフィス環境検討委員会を経て、子会社オルゴの吸収合併を機に2021年4月から新社屋建設の本格的な検討を開始しました。
建設の目的は以下のように定義しました。
・執務環境改善(スペース不足解消、福利厚生に資する機能の充実)
・経費節減(3拠点の集約による賃貸や重複するコストの削減)
・DXの推進(創造的アイデアを生むオフィス空間、柔軟な働き方の対応、DX推進の情報発信拠点など)
・ブランディングおよびSDGsへの取組み など
コロナ禍により3密が忌避されテレワークを余儀なくされる状況下、新社屋建設に対する逆風は強かったように思います。
それでも、複数の拠点に分かれていた社員が一堂に会し、対面で質の高いコミュニケーションをとる重要性こそが建設の理由だと考えます。
『OEC OFFICE』という頭文字を取った分かり易いコンセプトはどこから生まれたのでしょうか。
【細谷】
企画の初期段階で「どのような建物にしたいのか?」という問いを立て、情報を集めたり関係者と協議する中で、次のようなイメージが湧いてきたのを覚えています。
・新オフィスでは多様な社員が集い交流することで、新たな発想や創造的な活動が生まれるスペースであること。
・社内外のステークスホルダーとの交流や協働・共創のための開放性の高い場を用意すること。
・既存本社との接続性を高め、両社屋の機能性を最大に高めること。
すぐにそれらを連想させる英単語を書き出して、ゴロ良く並べて出来たのが『OEC OFFICE』というコンセプトです。設計段階で事務局メンバーは様々な取捨選択を求められ決断してきたわけですが、全員がこのコンセプトを理解し共有出来たことで上手くいった様に思います。
事務局は前述の企画段階、設計、施工工程から竣工に至る間、設計細部の検討や決定に関わり、同時に経営者層の思いや社員からの要望を設計に反映していった訳ですが、少ない人数での運営はやはり大変でしたか。
【吉岡】
はい、ステークホルダーが多いという点で大変でした。私は社員向けのワークショップや2週間毎に関係者が集う事務局会議の運営を担当したのですが、開催は2022年7月以降延べ60回以上に及びます。基本設計から実施設計、空間デザインやアート、引越計画まで多岐にわたるテーマの検討に必要なデータは膨大で、会議のたびに出てくる課題と共にその予実管理には苦労しました。
建設事業に携わったことのないメンバーが大半でしたので、小さなハプニングは日常茶飯事でそのたびに笑ったり怒ったり慌てたりしましたが、過ぎてしまえば良い思い出です。
今後は新社屋を活用したイベント企画も担いますので、良いアイデアや行事計画があれば社員のみなさんからお声掛け頂けると助かります。
【設備担当者】
私は本プロジェクト全体の進捗管理、予算管理及び設備分科会を担当しました。
進捗管理ではJVの提案スケジュールには当社の実状やスケジュールが考慮されていないこともあり、社内調整後にJVと再交渉することも多かったです。
これはJVの計画内容と社内の実状の両方を理解出来る私にしかできなかっただろう、という自負はあります。予算管理も歴史的な資材高騰のなかVE(Value Engineering)で利害の相反するステークホルダーと意見を交わしながら、運用利便性とのトレードオフでコストを抑えるために知恵を絞ったプロセスは良い経験となりました。
設計工程で建設事務局のみなさんがこだわった点はどのようなものですか?
【佐々木】
いろいろとありますが、「良質なコミュニケーションの促進」と「新しい働き方の提案」でしょうか。社員同士が良いコミュニケーションをとるために構造面では2棟をつなぐ渡り廊下、新社屋の3階と4階の吹き抜け階段、そして新旧社屋の接合点である新社屋3階にはカフェテリアを設けるなどヒトの動線を意識した造りとすることで「偶発的な情報の交叉や発案」を期待しました。その結果として、部門間や社員同士の良好なコミュニケーションがとれて仕事のし易さや楽しさを感じて頂けると嬉しいです。
また、社外との容易なコミュニケーションの実現のために、1階のOEC CUBEや大階段、2階のオープンスペースや大会議室はお客様や同業他社との交流を促進し、誰にでも開かれたスペースとして「セキュリティレベル0」としています。
新しい働き方については、グループアドレス方式とし、集中・コワーク・電話やWeb会議・知識共有(会議)、そしてリチャージ(リラックス)など、その都度必要とされる仕事の仕方と場所を選べるような家具の選択とレイアウト、コラボレーションスペースの確保などを専門家のサポートを得て進めてきました。
社員の皆さんには社内諸設備に関するルールを理解のうえ、積極的に新しい働き方を試してみて頂きたいです。
加えて、執務室毎の業務特性を意識したフロアカーペットのデザインや、戦略的に「オフィスアート」を取り込むことでビルの価値を高めると同時に、社員の感性を刺激し美意識や創造力を向上させる狙いも込めています。
アートにもさまざまな形でキャプション(短い説明文)などをつけていますので、鑑賞する際にご覧頂きより深く作品を理解することで愛着を持って頂けると幸いです。
最後に新社屋建設プロジェクトを終えての思いを聞かせてください。
【清家】
無事に竣工した社屋を見上げながら、大きな達成感と「このプロジェクトはヒトに恵まれていたな」と感じています。
当社にとって大きな投資となる新社屋建設をコンセプト通りにQCD遵守で竣工させることを目指して、メンバー全員で熱意をもって取り組んできました。それでも1つのビルを建てることは想像以上に広範な知識を持って、様々な意思決定や調整を要することでした。それを可能としたのは後述するコンサルタントや設計施工を担当する皆さんの協力でした。
持っている知識や経験を惜しげもなく開示したり、困ったときには迅速にいくつもの代替案を提示してくださいました。
専門分野ごとのプロが集まった梁山泊のようなプロジェクトで過ごした時間はこれからも忘れることはないと思います。
最後に関係各位へ感謝の意を表したいと思います。
まずはビル建設構想に理解と基本的な方向性を与えて頂きました森会長と加藤社長、設計施工過程で意見や指導、承認を頂きました役員の皆様に御礼を申し上げます。
そして、企画段階から竣工に至るまで、幅広い知見と経験をもって強力なサポートを頂きました三井住友信託銀行大阪建設コンサルティングチームの井上様、宮西様に厚く御礼を申し上げます。
おかげさまで、ビル建設には全くの素人集団である建設事務局メンバーが何とか新社屋の竣工にこぎつけることができました。
また、設計コンペに参加提案頂きました4社様には大変な熱意をもって取り組んでいただきました。
その中でも当社の意を汲んで素晴らしい提案を頂き、また設計施工、竣工まで高い技術力と熱意をもってこのプロジェクトを完遂いただきました株式会社山下設計の窪田常務様、茂木グループ長様、立石主任様、及び梅林建設株式会社の矢倉常務様、阿部作業所長様、吉良作業所次長様、その他大勢の関係の皆様方、この場をお借りして、深謝いたします。
本当にありがとうございました。